鬼(オニ)とは 鬼は伝説上の存在で、災いや厄をもたらすものと一般的に理解されています。また一部地域では鬼瓦とか守り神としても信仰されています。日本各地に伝説が残っている事から、完全に想像上の存在とする説には異論も多く、かつて日本に存在した異民族や、日本に漂着した異邦人であったという説を唱える人も居ます。
しかし平安時代以前に、鬼に繋がるような異形の外国人がそんなに多く日本に来れたかと言うと、それは非常に疑問が有ると言わざるを得ません。西洋人が大航海を始めるのはもっとずっと後だからです。よってやっぱり空想の存在であると決めつける人も居ます。
日本各地の鬼伝説に関しては余りに多すぎるので、その全てを詳しく説明するのは容量的に不可能と言っていいでしょう、分厚い本になってしまいます。その中でも有名な物には、秋田のナマハゲ、岩手の三ツ石、京都の酒呑童子、瀬戸内の桃太郎、岡山の温羅、沖縄のムーチー(鬼餅)、伊豆諸島の源為朝、佐渡のオンデコなどが有ります。
「鬼」は一般的には平安時代に中国から伝わったと言われますが、鬼ヶ城と温羅(おんら)伝説は平安期以前のものと考えられます、また秋田のナマハゲも「おに」と言う言葉を使っていません。鬼と言う言葉が伝わる前に「おに」が存在していた可能性が高いと考えられます。鬼の文字が入った諺も多く有りますが、ほとんど全てが肉体的な表現を伴っています。
「鬼」と言う文字は中国から伝わった漢字で間違い有りませんが、オニという日本語は何処から生まれたのでしょうか。一般的な説では実体の無い闇のような存在である「穏(オヌ、オン)」がオニに変わったと言われますが、これは曲解だと言わざるを得ません。東北のズーズー弁的な発音ではオニを「オヌ」と発音します。オヌの後に別の言葉が付く場合は「オン〜」と発音します。これは佐渡の「オンデコ(鬼太鼓)」でも実例が有り、さらにこの発音は「オン・ラ(温羅)」に繋がり、鬼伝説として一致を見せます。
そして更に「オヌ」と発音する妖怪は、日本には鬼しか存在しないのです(注1)。ズーズー弁と出雲弁は似ており古代の標準語だったと言う説も有ります。つまりオヌ、オンがオニに変わったと言っても、表面的な発音が古代出雲系から大和系に変わっただけで、実は中身は変化してない、というのが正しいでしょう。
注1 怪
異・妖怪伝承データベース(http://www.nichibun.ac.jp/youkaidb/)で「オヌ」で検索した。
源為朝の鬼ヶ島伝説 鎌倉時代に書かれた「保元物語」は源為朝が主人公と言えますが、この中にも鬼が出て来ます。おそらく最も最近の鬼伝説では無いかと思われます。伝説の詳細は省きますが、伊豆諸島に島流しになった為朝が鬼ヶ島を見つけ「宝をよこせ」と言うと、鬼に「昔は有った今はもう無い」と言われています。
ここに出てくる「鬼ヶ島」とは今の「青ヶ島」だと思われます。これを作り話だと言う人も居ますが、保元物語の鬼ヶ島の記述は、当時誰も知らなかった青ヶ島の特異な地形にそっくりです。
また為朝は当時「女護が島」と呼ばれていた八丈島で政治改革を行います。女護が島には女だけが住み、青ヶ島には男だけが住む習慣だったらしいのです。そして年に一度だけ男が女の元に通います。それを女は浜にワラジを並べて待ったと言います。これを為朝は「男女が別に暮らすのは誤りだ」と言い放ち、反対を押し切り嫁を貰い一緒に暮らすのです。
物語は、為朝が鬼を手下にした事を知った朝廷が慌てて征伐隊を繰り出し、為朝は屋敷の中で自害して終ります。しかし実は為朝が逃げて沖繩に渡り、その子孫が琉球王朝の始祖になったと言う伝説が、琉球王朝の正史に伝わっています。もちろん真相は不明ですが。
この為朝鬼伝説では、男と女に別れて生活していた島が有り、鬼ヶ島と女護が島と呼ばれていました。男鹿半島の近くにも女鹿という地名が有ります。そして桃太郎伝説の本家と言われているのが瀬戸内に有る数々の伝説であり、その中でも男木島と女木島が有名です。どうやら鬼と男と女の地名には深い関係がありそうです。
かつて女護が島と呼ばれていた島が八丈島以外にもあります。謎の海底遺跡で有名になった「与那国島」がそうです。ここにも変わった伝説が多く有ります。身長3メートルを超す「サンアイ・イソバ」とう女酋長が居たとか、昔は女しかいなかったとか、浜にワラジを並べて男を迎えたとか、大きなワラジを作り海に流したとか、個別に見れば妄想が生んだ取るに足らない伝説に見えます。しかし与那国には八丈島に有った男ヶ島が見当たりません。男ヶ島が沈んでしまったと考えれば、与那国の変わった伝説に説明が付きそうです。
オニはアマの兵士
オニ伝説と男女別の地名には関連性が見受けられます。それは偶然とは思えません。男ヶ島の無い与那国の伝説の変化は、偶然では無く必然を伴っています。
オニとは今は滅んだ「アマの兵士」だったのでは無いでしょうか。
アマは強い兵士を生み出すために工夫をし、兵士階級の男女を分けて育てる事でそれを実現した可能性が有ります。兵士の強さは力の強さであり身体能力です。これらは訓練する事で有る程度は鍛えられますが、持って生まれた遺伝的な要素に大きく影響されます。
つまり力が強く身体能力の高い男女をペアにすれば、その子供も高い身体能力が期待できます。これは訓練による戦闘能力を底上げし向上させます。これを何代も繰り返せば、更なる戦闘能力の向上が確実に期待できます。
しかしながら、これはそう簡単では有りません、男女の恋愛には好みがあるからです。また男女が一緒に暮らしてしまえば、雑婚を防止するのは難しく出生管理が上手くできません。
これを解決する方法には、優秀なサラブレッドと同じように血統を厳しく管理する必要が有ります。おそらくアマは兵士にも同じ様な管理を導入し、妊娠と出産を強制的に管理したのではないでしょうか。
つまりアマの兵士階級は厳格に男女に別れて生活をし、男は年に1度だけ女の所に通う事が許されたと思われます。ただし全員では無く選抜された男のみです。体の大きい者、力が強いもの、試合をして戦闘に優れた者を選び、短期間だけ女の元に行かせます。
女もそれを待ち望みます。出会いは年に一度で数日なので、好き嫌いの感情は入り込む余地はほとんど無く、ただ本能に任せて性交したでしょう。相手を選ぶ事は出来なかったと思われます。年に一度と言うのは妊娠出産が1年弱で終りますから、女達は全員が妊娠可能であり丁度いい期間だと言えます。
産まれて子はすぐ男女に分け、幼少から訓練を始め優秀な兵士に育てます。これを何世紀も繰り返せば、自然と身体能力が優れた兵士が生み出されたでしょう。しかも男女や家族のしがらみも無く、戦闘に特化した集団にすることが可能です。身長は3メートルを越え最大の者は4メートルに達したかも知れません。この男女別の兵士の居留地はアマゾネス伝説にも繋がります。
オニの強さを決める試合も有り、今の「相撲(すもう)」と呼ばれている物の原形になったかも知れません。相撲の行司には陰陽師に通じる点が有ります。そして陰陽師こそ鬼業(オンギョウ)であり、オニを指揮する役職だと思われるからです。
相撲の最高位は横綱と呼ばれ、かつてはその名誉は国王に匹敵したと言われてます。今の横綱ではちょっとイメージが重なりませんが、もしオニの横綱ではどうでしょうか。人を完全に超えたその戦闘能力には、王の権威すら霞んだ事でしょう。
オニの居留地
アマは日本にこれらの兵士を連れてきたと思われます。そして各地に兵士の居留地を作りました。それは男鹿半島、八丈島、与那国島です。他にも有るかも知れませんが、ちょうど日本を取り囲む形に存在しています。しかもかなり周辺に分けて配置されています。アマはオニを最強の兵士であると認めると同時に、かなり警戒していた可能性が有ります。
ナマハゲという言葉はどこから着たのでしょうか。色々説が有りますが、ナマハゲの語源は「生剥ぎ」でないかと想像します。生剥ぎとは頭の皮です。昔の日本には戦争の手柄の証拠として首を切り持ち帰る習慣があり、これは中国や南米や北米にも見られます。アメリカインディアンには頭の皮を剥ぐ習慣があります。これらに関連があると思われます。
つまり男鹿半島に駐留してきたアマの兵士が、戦で倒した敵兵の頭の皮を剥いでるのを見たのがナマハゲの語源でないかと想像します。何故頭の皮かと言うと、首を切ったのでは重過ぎて持ち運びに不便だからです。オニは強いですから一人で何百人も倒したかも知れません。
男鹿半島に少し離れた鳥海山麓に女鹿という地名が有り、ここには「あまはげ」というナマハゲに似た伝統が有ります。無言で子供をさらう伝統行事で、こちらを女版ナマハゲという人も居ます。能登半島にも「あまめはぎ」という伝統行事が有りますが、子供が各家庭を回って歩くもので鬼にはちょっと遠い気がします。また能登には佐渡と同じような鬼太鼓の伝統も有るようです。
北陸から東北にかけての日本海には、倒されるだけでは無いオニと思われる伝説が多く存在します。日本海をオニが頻繁に行き来していたと思われます。また日本は占領された土地でしたから、一部の鬼は居留地近くで数多くの悪さをしたでしょう。
去るオニ、放置されるオニ、反乱するオニ 岩手の鬼は悪さをしてましたが、最後はやっつけられ二度と来ないと言う約束手形を三ツ石に付けたと伝えられています。秋田のナマハゲは年に一度自由を与えられ、村を襲い娘を攫ったため、村人が懸けをして追い出したと言う伝説が赤神神社に残ってます。本当は村人が懸けに負けそうだったのですが、天の邪鬼が機転を利かせニワトリのマネをして鳴き声を上げ、これを聞いたオニが負けを認めて去って行ったと言うのです。
これと似た伝説は、紀伊半島南端の「橋杭岩」にも残っています。ここでは「役行者」対「天の邪鬼」ですが、天の邪鬼がニワトリのマネの鳴き声をして同様に勝っています。
伝統は南米や北米の先住民には戦闘時に身体と赤く塗る習慣が残っています。本当に真っ赤になります、しかも女の場合は身体を黒(青)く塗るようです。古代のオニも戦闘時には身体を赤く塗っていたのではないでしょうか。これが赤オニや青オニ、赤神として伝説になった可能性が有ります。オニは女も戦闘します、並みの男の兵士より遙かに強い兵士です。生まれと育ちが違います、完全な戦士の血統です。
秋田や岩手で去って行ったオニですが、他の地域では様子が違います。西日本では節分とか嫌われる対象として長く存在しました、伝統行事にも鬼を追い出す行事が多く存在しています。平安時代にも京を騒がせた酒呑童子と言う鬼伝説が存在しています。この地域のオニは逃げません、家来になるか殺されるかです。そして宝を奪われます。
しかし八丈島などでは放置され平穏に暮らしたようです。為朝が家来にした鬼に戦闘命令を出しても、戦うのを嫌だと拒否したと言う伝説も残っています。一方与那国では男ヶ島が消滅し女だけになり、それが元で苦難も味わったようです。
去るオニや暴れるオニが居た事から、どうやら日本に来たアマの軍隊に異常事態が発生した事が窺えます。天の邪鬼という存在がカギになりそうです。ともかく北のオニは撤退し、南と西の離島のオニは放置されたようです。
北のオニは九州や瀬戸内沿岸に集められた可能性が高いですが、収拾が付かないようになっていたのかも知れません。本国が崩壊したため占領地の反乱に備えてオニを召集したけど、極東のアマ司令部には全てのオニを管理する能力がもう無かったのでしょう。寒さが嫌いでオニが勝手に北から瀬戸内方面に移動した可能性もあります。
オニは戦う事しか出来ない生まれながらの戦士です、しかしその存在は悲劇的です。人道などと言うものは存在しません、オニの生きる道は鬼道のみです。その待遇に不満を感じ反乱するオニも少なからず存在したでしょう。鬼ヶ城の伝説はオニが城主のようです。
離島のオニは見捨てられのだと考えられますが、それは逆に幸せだったかも知れません。
獅子伝説 鬼に似た伝説の存在は他にも有ります、「獅子(しし)」もその一つです。中国の伝説では神獣で有り、ライオンに似たタテガミを持つ犬だとされています。実はこれとそっくりの犬が実在します。チベタンマスティフと呼ばれているチベット原産の犬です。背高が1メートル以上になる場合も有る大型種です。今は純血種は居なくなったそうですが、ちゃんとタテガミの有る優良な個体の場合は1億円以上の値が付く事も有るそうです。
普通中国で獅子というとシーズーと呼ばれる毛の長い小型犬です。これもチベット原産の固有種です。毛の長い犬はマルチーズも有名ですが、これは地中海のマルタ島が原産です。マルタ島と言えば鬼を連想させるミノタウロス伝説の有る島です。
最も小型の犬と言えばチワワです。これはメキシコ原産で、スペイン人が最初に目撃しマヤ文明と共に滅んだと思われていましたが、野生化したものが後に見つかり今に至っています。
最大の犬はマスティフで背高が1m、体重が100kgを超えるものも居ます。古代ローマのコロシアムではライオンと戦わせた事もあったらしいです。極めて主人に忠実で子供が悪戯しても動ぜず、番犬として最も優れていると言われています。ヨーロッパの貴族は広大な屋敷の見張り番として、マスティフを何頭か庭に放していたと言います。この犬こそ貴族の象徴でした。
この犬はシュメールが原産と言われており、シュメールには子牛のような巨大な犬の守り神の伝説が有ります。これらの犬とアトランティスは関連がありそうです。何しろシュメール、マルタ島、マヤ、チベットですから。
昔のマスティフはもっと巨大であり、数頭で眠らずに神殿の番をしていた可能性が有ります。ギリシア神話の「ケルベロス」は地獄の番犬で、頭が3つ有る眠らない巨大な犬の事です。巨大な犬の伝説も世界各地で一致を見せています。
アトランティスの生命科学 アトランティスでは強い兵士を生み出すために遺伝的な手法と使っていたと考えられます。それは犬にも当てはまったのでは無いでしょうか。
犬が家畜化されたのは2万年前頃の東北アジアだという説が一般的です。シベリアンハスキーがその子孫で、オオカミをソリを引くために飼いならしたのが起源と言われます。
犬はアトランティスに伝わり、大型化され番犬とし重用されるようになり、毛の長い愛玩犬と超小型の愛玩犬も生み出されたと思われます。この犬の調整はかなり優れた遺伝的な手法です。
現代も犬の種類は多いですが、基本はこれらの犬を掛け合わせた結果に過ぎません。チワワとマスティフでは体重は100倍ほども違います。同じ原産種からこの差を作り出す事は、現在の技術では不可能だと言えるでしょう。アトランティスの生命科学はかなり進んでいた可能性が高いと考えられます。
アトランティスは人間の小型種も生み出していたかも知れません。ミャンマー奥地にはタロン族という身長が100〜130センチメートルの民族がいます。チベットに近い国境付近で絶滅しかけています。巨人も小人も雑種化すればその特徴を無くして行くでしょう。オニもこうやって消えて行ったのだろうと思われます
南米アンデスには金髪の民族が居たと言う伝説も有ります。また金髪碧眼の神の伝説がインカとマヤに存在します。中世期のヨーロッパの貴族は金髪のカツラを競うように被りました。金髪にステータスを感じ憧れていたのです。魔女や妖術使いなどが鼻が高い伝説になってるのも、何かの影響かも知れません
オニ、小人、金髪、大きい鼻などの肉体的特徴は、アトランティス時代の階級の象徴であり、その名残りが世界各地の伝説に残っている思われます。
2010.3.31
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